何故今このタイミングで暴走するのか

私は帰ってきた。布団が恋しい。着いたと同時に布団へダイブし微動だにしない私に、母さんが「薬飲まなきゃいけないからヨーグルトだけでも食え」ともっともなことをのたまった。

薬を飲んで眠ったという認識もないまま吸い込まれるように意識をなくしていると、自室のドア一枚隔てた先から母さんの怒鳴り声が。

母さんは声がでかい。とてもでかい。私と話しているときもでかい。

テレビに向かって一人で喋っている時もでかい。

相手がいるのかと勘違いするほどでかい。しかし独り言だ。

そんなわけで当然、今電話で話している怒声もでかい。

これは具合の悪い身体に非常に響く。

聞けば相手は私の姉で、

「カラオケに行く約束をしたのにもう一ヶ月も音沙汰なしじゃん」

「いつになったら連れて行ってくれるの」

「無理なら無理で、『お母さんごめんね。忙しいからしばらく行けそうにないよ』って言ってくれればいいだけの話でしょ」

「なのにあんた連絡すらしないよね。こっちは毎日毎日楽しみに待ってるのに!」

還暦過ぎた母さんは仕事も引退し毎日家で退屈なのだ。

ああ分かる。分かるよ母さん。

あんたが寂しがりなのは分かってるんだよ。

だがしかし。

何故今このタイミングで暴走するのか。

あんたの娘が今具合悪くて寝てるんだが。何故今このタイミングで怒鳴っているんだ。

この身体にはあんたの怒鳴り声はきついんだよ。私は今頭が痛いんだよ。勘弁してくれ。

ふらりと立ち上がった私はドアを開けた。

「今からカラオケ行くぞ」

死にそうな声でフラフラしながら近くにあった鞄をひっつかんで死にそうな状態でフラフラしながら玄関へ。

「待って。鞄持ってっちゃダメ。お姉ちゃんいったん切るわ。あの子がおかしくなった。切るわ」

一気に冷静になったのか、母さんは鞄を取り返すとフラフラの私を誘導しUターンさせて、私はそのままフラフラと布団へと逆戻りすることに。

布団に倒れこんだまま再び微動だにしない私。

「カラオケ行きたいんだろうが」

「いやいいから。お前は寝てろ」

との問答をした気がするが結局そのまま夜まで意識が戻ることはなかった。

ということを休んでる間してたよって仕事仲間に話したら失笑された。

何故だろう。